脂漏性皮膚炎がよくわかる疾患ガイドページ
脂漏性皮膚炎は、皮脂の過剰分泌によって引き起こされる炎症性の皮膚疾患です。頭皮、顔、胸部などの皮脂腺が多い部位に主に発生し、赤み、かゆみ、フケなどの症状が特徴です。原因は完全には解明されていませんが、皮膚の常在菌の一種であるマラセチア菌の過剰増殖と密接な関係があるとされています。ストレスや気候の変化が症状を悪化させることもあります。
このガイドでは、脂漏性皮膚炎の基本情報、発症のメカニズム、治療法、予防策の理解を深めるための情報を提供します。正しいケアと対処法を通じて、日常生活の質の向上を目指します。
脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)とは?
脂漏性皮膚炎は、皮膚の脂分の過剰な分泌に関連して起こる慢性の炎症性皮膚病です。主に、頭皮、顔のTゾーン(おでこ、鼻、あご)、胸部や背中など、皮脂腺が多い部位に発生しやすい特徴があります。症状としては、赤みを伴う皮膚のかゆみ、フケのような白い鱗屑(りんせつ)、そして脂っぽい黄色いかさぶたが特徴です。頭皮に発生した場合、一般に「ふけ」として認識されることが多いですが、頭皮以外にも発症することがあります。
脂漏性皮膚炎の正確な原因はまだ完全には解明されていませんが、皮膚の常在菌であるマラセチア菌が関与していることが知られています。この菌は皮脂を栄養源としており、皮脂の過剰な分泌が菌の増殖を促し、結果的に炎症を引き起こすと考えられています。
治療には、抗真菌薬を含むシャンプーやクリームの使用、ステロイド薬の局所塗布があります。また、皮膚の乾燥を避けるため、適切な保湿ケアも推奨されます。定期的な皮膚の清潔と適切なスキンケアにより、症状の管理が可能です。しかし、脂漏性皮膚炎は再発しやすい疾患であるため、長期的な管理が必要になることが多いです。
主な症状は頭皮や生え際のフケ・かゆみ
脂漏性皮膚炎の症状は、まず患部が炎症で赤くなります。次に脂っぽく湿り気のある黄色いフケや乾燥したフケが出てきます。まれに軽いかゆみを伴うことがあります。青年期以降に脂漏性皮膚炎を発症すると、再発を繰り返すことが多く慢性化しやすいとされています。脱毛の症状はなく、薄毛との直接的な関係はありません。
症状がひどくなると、フケや剥がれた皮膚が浸出液とともに固まってかさぶたのようになることがあります。また、鱗屑(りんせつ)を伴って皮膚が盛り上がってくる症状も確認されています。鱗屑とは、皮膚から剥がれて溜まった角質がウロコ状に見える状態を指します。脂漏性皮膚炎がひどくなっていなくても、鱗屑が出現することがあります。
頭皮など皮脂の分泌が盛んな脂漏部位によく出現
脂漏性皮膚炎ができやすい部位は、頭皮や顔面、髪の生え際、耳の周囲などです。これらの部位は、脂腺という皮脂を分泌する器官が発達していることから脂漏部位と呼ばれています。首から下では、脇の下や胸、太股の付け根、膝の裏などが脂漏部位です。
いずれかの脂漏部位に炎症が起こっても、必ずしも脂漏性皮膚炎であるとは限りません。皮膚に炎症がみられた場合、適切な治療を行うために原因疾患を見極める必要があります。
原因は皮脂の分泌過多とカビの増殖
脂漏性皮膚炎の原因には不明な点が多いですが、皮脂の分泌が多いことが関係していると考えられています。発症に繋がる要因としては、以下が挙げられます。
- 体質的に皮脂の分泌が多い
- 不十分な洗顔・入浴
- 睡眠不足
- 精神的ストレス
- ビタミンB群の不足
- 紫外線ダメージ
また脂漏性皮膚炎の発症に深く関与していると考えられているのが「マラセチア」という真菌(カビ)の一種です。マラセチアは、皮膚に常在しており、皮脂を栄養にして増殖します。皮脂の分泌が増えれば増えるほど、マラセチアも増殖して皮膚に炎症を起こします。
本来、皮脂は肌をコーティングしてさまざまな刺激から守る働きがあります。皮脂は、水分と混ざることで皮脂膜を形成します。皮脂膜には殺菌作用があり、適量であれば肌にうるおいを与えてくれます。
皮脂が脂漏性皮膚炎を引き起こすきっかけは、マラセチアが作り出す炎症物質です。マラセチアは、皮脂に含まれるトリグリセリド(中性脂肪)を遊離脂肪酸に分解します。この遊離脂肪酸が皮膚に刺激を与えて炎症を引き起こします。
治療には薬用シャンプーとステロイド外用剤を使う
- 脂漏性皮膚炎の治療に有効な成分
- ケトコナゾール
真菌(カビ)に対して殺菌作用のある抗真菌薬です。さまざまな真菌性疾患の治療に用いられてます。日本で唯一、脂漏性皮膚炎に有効な外用剤として承認されている成分です。
- ケトコナゾールが配合されている商品
- ニゾラールシャンプー
有効成分ケトコナゾールが配合されている薬用シャンプーです。頭皮のべたつきやフケを解消して清潔な環境を保持します。薄毛予防にも効果があります。 - デノンソープ
水虫の治療に使用される薬用石鹸です。有効成分としてケトコナゾールが配合されているため、水虫以外の真菌性疾患にも効果が期待できます。よく泡立てて使用してください。
脂漏性皮膚炎による頭皮の症状の治療には、薬用シャンプーを使用します。シャンプーを毎日または1日おきに使用して、皮膚炎が落ち着いてからは週2回ペースに減らします。低刺激の石鹸やシャンプーを泡立てて優しく洗うだけでも、ある程度の治療効果が期待できます。
脂漏性皮膚炎になったら、患部をなるべく刺激しないことが大切です。清潔にしようと強めに擦ると、かえって症状が悪化します。十分に泡立てたシャンプーや石鹸で、優しく丁寧に洗うようにしましょう。
頭皮以外に脂漏性皮膚炎ができた場合には、ステロイド外用剤で炎症を抑える治療を行います。顔面には比較的弱いコルチコステロイドのヒドロコルチゾンのみが使用できます。 ステロイド外用剤の他に、抗真菌外用薬が併用されるケースもあります。抗真菌外用薬によってマラセチアの増殖を抑制することが目的です。
ケトコナゾールを含むシャンプーは脂漏性皮膚炎治療に効果的
有効成分ケトコナゾールは、脂漏性皮膚炎への適応が認められている日本で唯一の医薬品です。ケトコナゾールが配合されているシャンプーや石鹸には、脂漏性皮膚炎に対する優れた治療効果が期待できます。
脂漏性皮膚炎に対するケトコナゾールの有効性は、承認時に実施された臨床試験において確認されています。ケトコナゾールを1日2回患部に塗布することで、80%に近い有効性が認められています。
ケトコナゾールが配合されているシャンプーとして「ニゾラールシャンプー」があります。ニゾラールシャンプーは、脂漏性皮膚炎の治療だけでなく、薄毛の予防にも効果が期待できます。ニゾラールシャンプーを週2回、2〜4週間使用することで、脂漏性皮膚炎による頭皮のフケなどの症状が解消されます。
薬用石鹸「デノンソープ」にも有効成分ケトコナゾールが配合されています。ニゾラールシャンプーと同様に脂漏性皮膚炎に対して優れた効果が期待できます。使用する際は、お湯で濡らして十分に泡立ててから患部に揉み込んでください。3〜5分ほど慣らしたらきれいに洗い流します。
患部によってクリームとローションを使い分ける
頭皮にステロイド外用薬や抗真菌外用薬を使用する場合は、液体状のローション剤を使いましょう。顔面や胴体には軟膏タイプの外用剤が使用されます。患部によって適切な外用剤を選択してください。
顔面や首まわりは皮膚が薄いので、ステロイド外用薬を長期にわたって使用すると副作用が出やすくなります。比較的安全性の高いヒドロコルチゾンを使用し、症状が改善したら使用を中止しましょう。ただし、ステロイドの塗布を中止すると脂漏性皮膚炎を再発することがたびたびあります。
抗真菌外用剤には、シャンプーと同じく有効成分ケトコナゾールを含有したものが選択されます。ケトコナゾールは、ステロイドよりも副作用の発現率が低く、軽症の場合や症状改善後の再発防止に適しています。
脂漏性皮膚炎の予防のために日常生活で気をつけること
脂漏性皮膚炎を予防するためには、皮脂の分泌やマラセチアの増殖を抑えることが大切です。肌を清潔に保ち、ストレスを感じないように生活習慣を整えることで発症を防げます。
洗顔・洗髪で皮脂汚れを落として清潔な肌を保つ
脂漏性皮膚炎を発症しやすい頭皮や顔面は、清潔にしておきたい部位です。正しい洗顔・洗髪を行い、皮脂汚れをしっかりと落とすように心がけましょう。抗真菌薬を含んだシャンプーやリンス、石鹸を使用すると肌環境の改善に役立ちます。
洗髪と洗顔は毎日行ってください。洗顔は朝と晩の1日2回、洗髪は1日1回が基本です。髪を洗いすぎると乾燥したフケが出ることがあるため注意しましょう。1日1回しっかりと洗えば、脂漏性皮膚炎は十分に予防できます。
生活面では食事や睡眠などに気をつける
ストレスや睡眠不足は、皮膚の状態が悪くなってしまう要因となります。規則正しい生活は、皮脂の過剰分泌を抑えて肌の調子を整えます。しっかりと睡眠時間を確保して、ストレスフリーな生活を送ることが脂漏性皮膚炎の予防に繋がります。
栄養面ではビタミンB2やB6が欠乏してしまうと、肌の不調に関わるとされています。レバー、卵、ほうれん草、牛乳、さつまいも、かつおなどビタミンB2、B6が含まれる食べ物を積極的に摂るとよいでしょう。
その他、紫外線を避けることで脂漏性皮膚炎の悪化を防げます。紫外線は、皮脂を脂肪酸に変えてしまい、肌に悪影響を与えます。特に紫外線が強い夏には、帽子を被ったり日焼け止めクリームを塗るなどして、紫外線対策をしましょう。