タミフルの効果「ウイルス量を減らす・感染を予防する」について
タミフルの効果と効能
- 効能・効果
- A型またはB型インフルエンザウイルス感染症の治療と予防
タミフルはインフルエンザウイルス感染症を治療する効果を有しています。体内に侵入したウイルスの増殖を抑制する効能から、発熱や頭痛などの回復を早める効果が期待できます。
インフルエンザウイルスにはA型・B型・C型が存在し、タミフルはA型およびB型のインフルエンザに対して効果を発揮します。C型インフルエンザは一度感染すると抗体ができて、めったに感染することがなくなります。感染したとしても一般的な風邪程度の軽症で済むことが多く、治療の必要性が少ないと考えられます。
インフルエンザウイルスの増殖を抑制して辛い症状からの回復を早めます。
インフルエンザウイルスは細胞内に侵入して増殖すると、細胞外に放出されて周囲の細胞に感染を拡げます。
タミフルに配合されている有効成分オセルタミビルには、ノイラミニダーゼ(インフルエンザウイルスの放出を促進させてしまう酵素)の働きを阻害する効能があり、症状の悪化を防いで治療にかかる時間を短縮させます。
インフルエンザに対するタミフルの効果は、プラセボ(偽薬)とオセルタミビルを服用し比較した臨床試験によって実証されています。臨床試験ではインフルエンザ発症後36時間以内の患者252名のうち130名にプラセボが、122名にオセルタミビル75mgが経口投与されました。
臨床試験から得られた結果は以下のとおりです。
インフルエンザに苦しむ期間を1〜2日短縮する
臨床試験の結果、プラセボを使った患者は回復するまで73〜106時間かかったのに対して、オセルタミビルを使った患者は54〜86時間で全ての症状が治癒しました。それぞれの中央値は、プラセボの93.3時間に対して、オセルタミビルは70.0時間です。
以上の結果から、タミフルを使った場合とそうでない場合では、インフルエンザから回復するまでの期間に標準で1日ほど、最大で約2日間(52時間)の差が生じることが分かります。
およそ1.5日で発熱を鎮める
臨床試験では、インフルエンザによる発熱が治まるまでの時間も検証されています。発熱が生じた患者の体温が平熱(36.9℃以下)に下がるまでにかかった時間(中央値)は、プラセボで60.5時間、オセルタミビルで33.1時間でした。無治療では2.5日ほど高熱に苦しむことになりますが、タミフルを使うことでその期間を1.5日程度に短縮できることが分かります。
頭痛や悪寒など全ての症状で早期治癒が確認されている
タミフルを使うと、インフルエンザの諸症状が回復するまでの時間が短くなります。以下の表は、オセルタミビル(タミフル)を服用していた場合と、プラセボ(偽薬)を使用した場合の比較試験で得られた結果です。
数字が小さいほど回復が早いということになります。
症状 | オセルタミビル | プラセボ |
---|---|---|
悪寒・発汗 | 11.1時間 | 24.4時間 |
筋肉痛・関節痛 | 14.7時間 | 25.5時間 |
頭痛 | 21.6時間 | 26.8時間 |
倦怠感・疲労感 | 23.5時間 | 30.5時間 |
症状 | オセルタミビル | プラセボ |
---|---|---|
のどの痛み | 20.4時間 | 29.5時間 |
鼻症状 | 40.7時間 | 56.0時間 |
咳 | 50.0時間 | 63.5時間 |
悪寒や筋肉痛などは短縮した割合が高く12時間程度、短縮率が低い頭痛や疲労感などに対しても5時間ほど改善までの期間を短縮する効果があります。呼吸器症状には安定して効果を表し、回復時間をおよそ10時間縮めます。
頭痛や咳など症状が重症化するのを防ぐ効果があります。
タミフルにはインフルエンザからの回復を早める効果の他に、発熱や頭痛、喉の痛みなどの症状が重症化するのを防ぐ効果が期待できます。タミフルの働きで体内におけるウイルスの総数が減少することで、病原体に対する免疫反応として起きている症状が最小限に抑えられるためです。
症状の重症化を抑えるタミフルの効果については、重症度を数値化したスコアをプラセボと比較した臨床試験によって実証されています。
下記の表における重症度は、患者が自らの症状について「無し→0点、ほとんど気にならない→1点、かなり気になる→2点、我慢できない→3点」と自己評価したスコアに対して、症状が続いた時間をかけ算したものです。
重症度を表すスコアは、数字が小さいほど重症化せずに済んだと判断できます。
症状 | タミフル | プラセボ |
---|---|---|
咳 | 67 | 110 |
筋肉痛 | 33 | 62 |
鼻閉 | 60 | 80 |
のどの痛み | 20 | 29 |
倦怠感 | 54 | 89 |
頭痛 | 16 | 34 |
発熱 | 21 | 49 |
いずれの症状においても、タミフルが使用された患者の重症度がプラセボと比べて低くなる結果となりました。タミフルの症状の重症化を防ぐ効果が明らかであることが実証されました。
タミフルには体内のウイルス量を減少させる効果があります。
タミフルにはインフルエンザウイルスの増殖を阻害することで、体内に侵入したウイルスの総数を減少させる効果が認められています。
発熱から4日目のインフルエンザウイルスの残存率は無治療では93%ですが、タミフルによる治療を受けた場合ではA型で54%、B型では38%に減少するとの報告があります。6日目になると無治療群が50%、タミフル治療群はA型が12%、B型が4%と無治療群よりも大きくウイルス量を低下させています。タミフルを使うのと使わないのとでは、発症から4日目以降のウイルス量に大きな差が生じていることが分かります。
およそ36時間で感染力のあるウイルスの全滅を確認
感染力のあるウイルス量を示すウイルス力価という測定法を用いた試験によると、インフルエンザが感染してからおよそ1日半後にウイルス力価が最大となりました。オセルタミビル群はプラセボ群よりもウイルス力価の最大値が低く、速やかに低下しました。オセルタミビルは、飲み始めてから36時間ほどでウイルス力価をほとんどなくしましたが、プラセボは同程度にウイルス力価が低下するまで108時間を要しています。
インフルエンザの予防効果について
家族や身近な人が感染した際など緊急時の予防に適しています。
インフルエンザに感染する前からタミフルを服用しておくと、病原体が発症に至る量まで増殖することを防ぎます。タミフルを1日1回服用することで、インフルエンザの発症を予防する効果が期待できます。
タミフルの予防投与は、家族など普段からよく接する人にインフルエンザ感染が発覚した際の緊急的な対策として非常に効果的です。感染者との接触から48時間以内に服用すれば高確率で予防ができることが確認されています。
インフルエンザ予防にタミフルを用いる場合の注意点として、服薬中しか効果が得られない、服用期間は最大で10日間である、ということから長期的な予防には不向きであり、予防接種のような効果は期待できません。
インフルエンザの発症リスクを1/6に抑える予防効果があります。
タミフルの予防効果については、プラセボとのインフルエンザ発症率を比較した臨床試験で実証されています。
42日間にわたってプラセボまたはオセルタミビルを経口投与したところ、インフルエンザの発症率はプラセボ群が8.5%(13/153名)であったのに対して、オセルタミビル群は1.3%(2/155名)でした。
以上の結果から、タミフルを予防投与することで、インフルエンザの発症率が1/6以下にまで低下する効果を得られることが分かります。
タミフルの効果はいつから実感できるのか
服用からおよそ1日半で発熱などの症状が改善されます。
タミフルの効果はインフルエンザ症状が改善することで実感できます。臨床成績では服用11時間後に悪寒や発汗が治まり、続けて、筋肉痛や頭痛などの症状が改善していきます。発熱が落ち着くのは服用からおよそ33時間後です。
タミフルは服用から数時間で血中に成分が行き渡り、ウイルスの増殖を抑制し始めます。しかし、ウイルスの増殖が抑えられても、体の不調がすぐに緩和されるわけではありません。タミフルは、ウイルスの増殖を抑える働きをする薬ですので、身体的な症状を直接的に緩和・改善する効果はありません。そのため、飲んですぐに「身体が楽になる」といった劇的な治癒を実感することはありません。
タミフルが効かないこともあるのか
48時間以上経過してしまっている場合や耐性ウイルスには効かないことがあります。
インフルエンザを発症してから48時間以上経ってタミフルを使用した場合、十分に効かないことが考えられます。症状があらわれてから48時間が経つと既にウイルスが増殖しきっており、ウイルスの増殖を抑えるというオセルタミビルの効能が意味を成しません。
少数ではありますがオセルタミビルが効かない耐性ウイルスが確認されています。
2017年から2018年にかけてのシーズンには抗インフルエンザ薬(オセルタミビル・ペラミビル)に対する耐性を有するウイルスが全体の1.6%に検出されました。13歳以上の青年および成人がオセルタミビルを摂取した場合、0.67%の頻度で耐性ウイルスが出現することがあります。耐性を得たウイルスは感染性の低下がみられ、感染部位における増殖や伝播力は小さいと考えられています。
風邪には効果がありません。
インフルエンザの症状は風邪とよく似ていますが、タミフルには風邪を治療する効果はありません。タミフルの効果はインフルエンザウイルスにのみ有効性が示されており、一般的な風邪の原因となるウイルスに対しての治療効果は期待できません。風邪による発熱などの症状を緩和する解熱作用や頭痛に効く作用もありません。
同様に、インフルエンザを原因としない熱や頭痛を改善する効果もないとされています。タミフルがインフルエンザの回復を早めるのは、ウイルスの増殖を抑制する効能によるもので、各症状を直接改善しているわけではありません。そのため、タミフルには単なる解熱作用や頭痛に効く作用はないと考えられます。