リベルサスの副作用「吐き気や下痢はいつまで続く?」について
主な副作用は吐き気や下痢などの胃腸障害

リベルサスの主な副作用は、吐き気や下痢といった軽度の胃腸障害です。
リベルサスの発売前に行われた臨床試験では、主な副作用として以下が報告されています。
症状 | 発症率 |
---|---|
悪心(吐き気) | 10.80% |
下痢 | 6.20% |
便秘 | 4.30% |
嘔吐 | 4.30% |
腹部不快感 | 2.40% |
腹痛 | 1.90% |
消化不良 | 1.90% |
上腹部痛 | 1.70% |
腹部膨満 | 1.60% |
吐き気や嘔吐などの副作用がおきる原因は、リベルサスの「胃排泄遅延作用」にあります。
胃排泄遅延作用とは、胃腸の運動を鈍らせて、胃の内容物の排出を遅らせる働きのことです。
この作用によって食べ物が胃の中に残る時間が長くなることで、胃のムカつきや気持ち悪さが生じてしまいます。
リベルサスが食欲抑制などの効果を発揮するうえで欠かせない作用ではありますが、効きすぎると吐き気や嘔吐などの副作用となって現れてしまうのです。
便秘や下痢の副作用も同様にリベルサスが胃腸の運動に影響を及ぼすことで生じています。
症状は軽度で済む場合が大半ですが、症状が辛くて継続が困難な場合には、医師の指示を仰いで用量を調整するなどの対処が必要です。
- 副作用の発症率に関する参考サイト
- インタビューフォーム リベルサス錠 - 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PDF:2.65MB)
吐き気などの症状はいつまで続く?
胃腸障害の副作用は、リベルサスを飲み始めた初期に発生しやすい傾向があるようです。
有効成分セマグルチドの安全性が検証された臨床試験では、吐き気と便秘の副作用が現れた時期は、服用を始めてから16週間以内がほとんどであったとしています。
また別の研究では、リベルサスの副作用が持続する期間が検証されています。
以下のデータは、セマグルチド14mgが投与された患者に発現した「吐き気」「下痢」「嘔吐」の副作用が持続した期間を示したものです。
症状 | 中央値 | 最短値 | 最長値 |
---|---|---|---|
吐き気 | 20.5日 | 4日 | 61.5日 |
下痢 | 9日 | 3日 | 44日 |
嘔吐 | 2日 | 1日 | 9日 |
もっとも持続的に見られた副作用が、吐き気です。早い人では数日で治まっているようですが、長い人では2ヶ月程度続いていることが分かります。
中央値は20日とされていることから、吐き気の副作用がみられた場合、おおよそ3週間ほど症状が続くのが一般的であると考えられます。
副作用の程度はほとんどが軽度~中等度であったとされていますが、セマグルチド14mgを服用した患者のうち、11.6%(54/465)が副作用を理由に治療の継続を断念したようです。
- 副作用の持続期間に関する参考サイト
- Yuichiro Yamada, et al. "Dose-response, efficacy, and safety of oral semaglutide monotherapy in Japanese patients with type 2 diabetes (PIONEER 9): a 52-week, phase 2/3a, randomised, controlled trial"Lancet Diabetes Endocrinol. 2020 May;8(5):377-391.
- Julio Rosenstock, et al. "Effect of Additional Oral Semaglutide vs Sitagliptin on Glycated Hemoglobin in Adults With Type 2 Diabetes Uncontrolled With Metformin Alone or With Sulfonylurea"JAMA. 2019 Apr 16;321(15):1466-1480.
高用量であるほど副作用が出やすい

リベルサスの副作用は、高用量であるほど発症率が高くなる傾向が確認できます。
先述した海外の研究では、セマグルチドにおける用量別の副作用の発現率も示されています。
- 吐き気の副作用の発症率(用量別)
- セマグルチド3mg・・・7.3%
- セマグルチド7mg・・・13.4%
- セマグルチド14mg・・・15.1%
上記の表は、セマグルチドの服用中に、吐き気の副作用を少なくとも1回以上生じた患者の割合を示しています。
セマグルチドの用量が高くなるほど、副作用の発現率が上昇していることが分かります。
下痢や嘔吐などの吐き気以外の胃腸障害に関しても、高用量であるほど発症しやすい傾向が確認されています。
リベルサスは、最大で1回14mgの副作用が可能です。ただし、7mgで十分な効果がある方は無理に14mgに増量する必要はありません。副作用が心配な方は低用量での使用をおすすめします。
また吐き気などの副作用は、用量を増量したタイミングでおこりやすい傾向があります。4mgから7mgもしくは7mgから14mgに用量を増やす場合には、特に注意してください。
消化の悪い食事を控えるなどして対策が可能

リベルサスによる胃腸障害の副作用は、下記のような対策をとることである程度和らげることができます。
- 食事の量を減らす
- 脂肪分、食物繊維の多い食品を避ける
- 食後は直立姿勢を保つ
リベルサスの胃腸障害は、食べたものが胃の中に溜まる時間が長くなることで生じます。食べ過ぎを控えて食事の量を減らせば、胃の中に溜まる食べ物が減り、胃のムカつきや気持ち悪さが抑えられます。
高脂肪食品は胃の運動を抑制するため、胃もたれなどの胃腸障害を起こしやすいです。また、食物繊維の摂りすぎは、下痢や便秘の悪化を招きます。リベルサスの服用中は、脂肪や食物繊維の摂取はほどほどにしましょう。
食後に前かがみや猫背の姿勢でいると胃酸や胃の中の食べ物が逆流しやすくなって胸やけを起こしやすいです。食後は体をまっすぐにして、30分くらいは休みましょう。
低血糖などの重大な副作用

リベルサスの副作用は基本的に軽度かつ一時的なものです。しかし、ごくまれに適切な処置が必要となる重大な副作用が生じることがあります。
- 低血糖
- 急性膵炎
- 胆嚢炎、胆管炎、胆汁うっ滞性黄疸
リベルサスは、低血糖、急性膵炎、胆管炎、胆汁うっ滞性黄疸が報告されています。これらの副作用が疑われるような症状があったら、すぐにリベルサスの服用を中止して医療機関を受診してください。
低血糖(発症頻度:不明)
低血糖とは、糖尿病治療薬の血糖降下作用により、過度に血糖値が下がってしまった場合におきる副作用です。
リベルサスの血糖降下作用は食後などの血糖値が上昇するタイミングでのみ働くことから、比較的低血糖を起こしづらいとされています。
ただし、インスリン製剤やスルホニルウレア剤など、別の糖尿病治療薬を併用している場合には低血糖のリスクが上昇します。
用量を抑えて使用するなど、医師の指示に従った対策が必要です。
低血糖と思われる症状があったらすぐに糖質を摂取してください。α-グルコシダーゼ阻害剤を併用している場合は糖質の分解が抑制されているのでブドウ糖の摂取が必要となります。
脱力感、倦怠感、高度の空腹感、冷汗、顔面蒼白、動悸、振戦、頭痛、めまい、嘔気、視覚異常など
急性膵炎(発症頻度:0.1%)
急性膵炎とは、膵臓に急性の炎症が生じる疾患です。胃のあたりにおきる激しい痛みが特徴です。半数程度の方は、痛みが背中まで広がります。
リベルサスの安全性が検証された海外の臨床試験において0.1%の確率で発症が確認されています。日本人を対象とした臨床試験では報告されていません。
高い頻度でおきるリベルサスの副作用として軽度の胃腸障害も報告されていますが、症状が激しい場合には急性膵炎が疑われます。
腹痛にのけぞると強くなり、かがむと弱くなる、などの特徴がみられる場合は、特に急性膵炎の疑いが強いです。
急性膵炎を起こした方は、治療後もリベルサスの服用を再開できません。
嘔吐を伴う持続的な激しい腹痛など
胆嚢炎、胆管炎、胆汁うっ滞性黄疸(発症頻度:不明)
胆嚢炎と胆管炎は、それぞれ胆嚢(のう)と胆管に炎症が生じる疾患です。
胆汁うっ滞性黄疸は、肝臓で作られた胆汁の流れが阻害された結果、黄疸(皮膚や目の白部が黄色くなる)の症状が生じている状態を指します。
いずれも胆嚢や胆管に石が形成される「胆石症」に起因して生じることがあります。
リベルサスによる発症頻度は不明とされていますが、GLP-1受容体作動薬には胆石症のリスクがあることから、重大な副作用として注意喚起されています。
上腹部の不快感や鈍痛、右上腹部の痛み、発熱、濃い色の尿、薄い色の便、全身のかゆみ、皮膚や目が黄色に変色など
低い頻度でおきるその他の副作用

胃腸障害の他には、食欲減退や頭痛などの副作用が報告されています。発生頻度は5%未満と胃腸障害と比較すると低いものばかりです。
- 胃腸障害以外で報告されている主な副作用
- 食欲減退(4.5%)、頭痛(1.2%)、糖尿病網膜症(1.3%)、めまい(0.8%)など
食欲減退は、胃腸障害を除くリベルサスの副作用の中では比較的発生しやすい副作用です。
臨床試験では副作用として報告されていますが、リベルサスの働きの一つでもあります。そのため、食欲減退があるのは薬効が正常に働いている証拠とも考えられます。
ダイエット効果が目的でリベルサスを服用している場合は、食欲が減ることで無理なく食事量をコントロールできます。