ボルタレンの効果「頭痛、歯痛、生理痛、腰痛など」について
ボルタレンの効果と効能
- 効能・効果
- (1) 関節リウマチ、変形性関節症、変形性脊椎症、腰痛症、腱鞘炎、頸肩腕症候群、神経痛、後陣痛、骨盤内炎症、月経困難症、膀胱炎、前眼部炎症 、手術後や抜歯後の鎮痛・消炎。
- (2) 鼻から喉(咽頭、喉頭)の粘膜が炎症をおこす急性上気道炎の鎮痛・解熱。
ボルタレンは非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)という種類の痛み止めです。炎症部位で誘発されるプロスタグランジンという物質の生成を抑制することで、患部の痛みや腫れ、発赤などの症状を和らげます。
内服薬のボルタレン錠は全身に作用するため、体中のあらゆる痛みの症状に効果的です。慢性的な痛みから急な痛みにまで対応しており、熱を下げる解熱作用も期待できることから、効果の汎用性に優れています。
ボルタレンの有効成分であるジクロフェナクの鎮痛効果の強さは、NSAIDsの中でもトップクラスです。
同じNSAIDsのインテバン(一般名:インドメタシン)は同等の効き目を有していますが、その他のNSAIDsではジクロフェナクほどの効果の強さは期待できません。
最短15分で効き始めて最長10時間持続します。
ボルタレン錠の鎮痛効果は最短15分で効き始めます。即効性があるため、痛みをすばやく軽減できます。効き始めは遅くても45分以内であり、平均して服用26分後には効果が発現します。
効果の持続時間は6〜10時間です。症状や痛みの強さによって個人差がありますが、大半は8時間ほど持続します。
扱いやすいNSAIDs
ボルタレンは、NSAIDsとして平均的な即効性および効果の持続時間を有しています。即効性ではロキソニン、効果時間ではナイキサン(一般名:ナプロキセン)が優れていますが、効果の強さを含めるとボルタレンの方が汎用性が高く、使いやすいNSAIDsといえるでしょう。
痛みの原因物質の合成を抑制して消炎・鎮痛効果を示します。
ボルタレンの有効成分ジクロフェナクは、痛みの原因物質であるプロスタグラジンが体の中で作られるのを抑制します。プロスタグラジンは、患部に炎症を引き起こして、頭痛や歯痛、関節痛など様々な痛みを生じさせます。
プロスタグラジンは、組織がダメージを受けた際に分泌されるCOX(シクロオキシゲナーゼ)という酵素から合成されます。ジクロフェナクには、COXを阻害する作用があります。ボルタレンの消炎・鎮痛効果は、ジクロフェナクのCOX阻害作用によるプロスタグラジン合成の抑制によって発揮されます。
熱を下げる解熱剤としての効果もあります。
プロスタグランジンは痛みの原因物質であると同時に、発熱を促す作用もあります。ジクロフェナクがプロスタグランジンの合成を抑制することで、熱を下げる解熱効果も発揮されます。
解熱作用は服用後30分以内に効き始めて、6時間以上持続します。
解熱剤としてボルタレンを使う場合は、高熱によって不眠や食欲の減退が見られる時や、仕事や生活に支障が出る時などに用いると効果的です。患者の体力を奪う発熱ですが、同時に体内に侵入した病原体を弱めたり、体を守る白血球の動きを活発にする免疫としての働きもあります。少しくらいの熱でボルタレンを使ってしまうと、かえって治りが悪くなる可能性があることを覚えておきましょう。
頭痛、歯痛、生理痛など疾患別の効果
ボルタレンの有効範囲は全身にわたり、さまざまな部位の痛みや炎症の改善に効果を発揮します。歯痛や腰痛など適応が認められている症状にはもちろんのこと、頭痛などの適応外の症状にも効果が期待できます。
頭痛への効果について
ボルタレンは、片頭痛と緊張型頭痛に対して鎮痛効果を発揮します。
片頭痛は頭の片側がズキズキと痛む頭痛であり、吐き気などの随伴症状を伴います。
緊張型頭痛は頭が締め付けられるように痛む頭痛であり、肩こりや緊張、ストレスを原因として発症します。
いずれの頭痛においても、痛みが出た時に服用することで疼痛を速やかに消失させます。
片頭痛に対しては、痛みに伴って現れる随伴症状を軽減する効果も期待できます。緊張型頭痛の治療ではボルタレンを含むNSAIDsが主体とされていますが、片頭痛の治療では生活への支障が少ない軽度〜中等度の症状に対してのみ有効性が認められています。
頭痛にボルタレンが効かないときは?
緊張型頭痛では、抗うつ薬や抗不安薬、筋弛緩薬などの併用で改善されることがあります。緊張型頭痛が慢性化している場合には、医師に処方を検討してもらいましょう。
片頭痛では、中等度〜重度の症状に用いられるトリプタン系薬剤への切り替えが必要な可能性があります。日本では片頭痛の特効薬として、トリプタン系薬剤であるスマトリプタンが用いられています。
歯痛への効果について
ボルタレンは抜歯や虫歯、親知らず、歯周病などでおきる歯の痛みにも効果的です。現在起きている痛みを和らげたり、施術時の麻酔が切れた後に襲ってくる痛みの発生を予防することができます。
特に抜歯後の疼痛・炎症に対しては、臨床試験で82.3%(284/345例)の優れた有効率が実証されています。
歯痛にボルタレンが効かないときは?
抜歯後の痛みには大きく個人差があります。ボルタレンの鎮痛効果は1日3回飲むことで1日中持続しますが、痛みが強いケースでは服用後数時間くらいしか抑えきれないこともあります。
抜歯後2〜3日くらいから強い痛みがぶり返してきた場合には、穴が上手く塞がらずに骨が露出する「ドライソケット」が疑われます。傷口の消毒や抗生物質の投与などの治療が必要となることもありますので、我慢せずに医師に相談してください。
生理痛への効果について
ボルタレンは、月経に伴って起きる生理痛の緩和にも効果的です。下腹部や腰の痛み、頭痛などの諸症状を和らげます。ひどい生理痛によって日常生活に支障を来す状態を指す「月経困難症」に対しては、臨床試験で80.8%(42/52例)の有効率が確認されています。
生理痛にボルタレンが効かないときは?
ボルタレンは生理痛が出てから服用しても鎮痛効果を示しますが、痛みが出る前もしくは痛みがひどくなる前に飲み始めることでより高い効果を発揮します。薬の力を借りずに乗り切ろうとするのではなく、早い段階でボルタレンの服用を始めることが大切です。
鎮痛剤でも抑えきれない生理痛の治療には、低用量ピルが用いられます。低用量ピルには、子宮内膜の増殖を阻害することで生理痛を和らげる効果があります。子宮内膜の成長を抑制して、痛みの原因である子宮の収縮を減らします。
腰痛への効果について
腰痛に対するボルタレンの効果としては、臨床試験で63.7%(158/248例)の有効率が実証されています。
鈍い痛みが長期的に続く「慢性腰痛」と、ぎっくり腰などに代表される「急性腰痛」に対してそれぞれ鎮痛効果を発揮します。
慢性腰痛に対しては、我慢できないほどに痛む時や大切な用事がある時に使うことで、一時的に負担を和らげることができます。副作用があることから、長期的な毎日の対症療法には向きません。
急性腰痛に対しては、発症直後の激しい痛みを和らげるだけでなく、抗炎症作用による治癒の促進が期待できます。筋肉や筋膜の炎症を鎮めることで、疾患からの回復を早めます。
腰痛にボルタレンが効かないときは?
ボルタレンのようなNSAIDsが効果を示さない場合、腰痛が心因性または神経の興奮で起きる痛みである可能性が考えられます。
心因性腰痛には、抗不安薬や抗うつ薬、抗てんかん薬などが有効です。
神経の興奮による腰痛には、神経障害性疼痛治療薬という特殊な薬剤が有効です。
医療機関を受診して、腰痛の原因を明確にしたうえで適切な治療法を選択することが大切です。
風邪や関節痛、腱鞘炎などその他の疾患に対する効果について
ボルタレンは、幅広い領域の疾患に対する効果の有効性が認められています。以下は、上記で紹介した疾患を除く適応症に対する臨床成績です。
疾患 | 有効率 |
---|---|
咽喉頭炎 | 68.0% |
かぜ症候群 | 65.5% |
これら鼻腔から喉にかけておきる炎症は、一般的に風邪と呼ばれます。ボルタレンは風邪の症状に対して、喉の痛みを抑えたり、熱を下げたりする目的で使用されます。
疾患 | 有効率 |
---|---|
変形性関節症 | 62.2% |
腱鞘炎 | 57.7% |
頚肩腕症候群 | 55.3% |
関節リウマチ | 51.6% |
変形性関節症は体重がかかりやすい膝や股関節、関節リウマチは手の指や手首などから痛みが出始める関節痛です。頚肩腕症候群は肩こりや首から腕にかけての痛み・しびれが起きる疾患です。腱鞘炎を含めたこれらの疾患には痛みを抑える対症療法を目的に使われます。
疾患 | 有効率 |
---|---|
角膜など前眼部の炎症 | 76.6% |
後陣痛 | 73.6% |
神経痛 | 72.9% |
手術後の疼痛・炎症 | 72.3% |
変形性脊椎症 | 67.0% |
膀胱炎 | 66.5% |
骨盤内炎症 | 66.3% |
その他にも、後陣痛や骨盤内炎症などの女性特有の疾患や、あらゆる原因で起きる神経痛、手術後の疼痛など、さまざまな痛みの症状を和らげる目的でボルタレンは用いられています。
しかし、末梢神経が痛みを起こす神経障害性疼痛や心因性が考えられる線維筋痛症には効果がありません。自身の痛みの正体が明らかでない場合は、自己判断でボルタレンを使わないようにしましょう。
耐性化は起こりにくい
鎮痛薬はオピオイドと非オピオイドに大きく分けられます。鎮痛効果の強さはオピオイドが勝っていますが、非オピオイドにはほとんどない副作用、耐性や依存といった問題があります。ボルタレンなどのNSAIDsは非オピオイドに分類されており、耐性ができる可能性は低いと考えられます。