アトピー性皮膚炎がよくわかる疾患ガイドページ

アトピー性皮膚炎は、慢性的な炎症性皮膚疾患であり、特に乳幼児や小児に多く見られます。遺伝的要因に加え、環境要因やアレルゲンとの接触が原因となり、皮膚の乾燥、赤み、かゆみなどの症状を引き起こします。この病気は完治が難しく、症状の管理が中心となりますが、生活習慣の改善や適切なスキンケア、治療薬の使用により、多くの患者が日常生活に大きな影響を受けることなく管理することが可能です。

このガイドでは、アトピー性皮膚炎の原因、症状、治療法、そして症状を和らげ予防するための方法について詳しく説明し、患者の理解を深めることを目指します。

アトピー性皮膚炎（あとぴーせいひふえん）とは？

アトピー性皮膚炎は、遺伝的要因によって生じる可能性が高い慢性的な炎症性皮膚疾患です。この病気は、皮膚の乾燥、激しいかゆみ、赤み、そして湿疹といった症状が特徴的で、特に幼少期に発症することが多いですが、成人してから発症する場合もあります。症状は時期によって悪化したり改善したりを繰り返します。

アトピー性皮膚炎の原因は完全には解明されていませんが、皮膚のバリア機能の低下と免疫系の異常反応が関与していると考えられています。このため、アレルゲンや刺激物に皮膚が敏感に反応しやすくなっています。

日本では、近年、アトピー性皮膚炎の患者数が増加傾向にあると報告されています。子どもの罹患率は特に高く、一部の報告では学童期の約10%〜20%が何らかの形でアトピー性皮膚炎の症状を持つとされています。生活環境の変化や食生活の欧米化が影響している可能性が指摘されています。

治療には、スキンケアによる皮膚の保湿、炎症を抑えるための外用ステロイドや免疫調整剤の使用、アレルゲンや刺激物の回避などがあります。アトピー性皮膚炎は治療が難しい疾患の一つですが、適切な治療と管理により症状の軽減やコントロールが可能です。患者や家族の理解と協力が重要とされています。

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我慢できないかゆみを伴う湿疹ができるアトピー性皮膚炎の症状

強いかゆみを伴う湿疹が繰り返し起こるのがアトピー性皮膚炎の症状の特徴です。掻いても掻いても治まらない激しいかゆみに苦しむ方も多く、我慢できずに掻きむしってしまうことが余計に症状を増悪させます。顔や耳、首回り、ひじの内・外側、足の付け根、ひざの表・裏側などにアトピー性皮膚炎の湿疹はできやすく、左右対称に発症する傾向があります。

アトピー性皮膚炎のかゆみが襲ってくるタイミングは、入浴後など体が温まった時や床に就いた時、汗をかいた時、イライラしている時など人によって様々です。かゆみで仕事が手につかなかったり、夜眠れなくなる程の辛い状況にも関わらず、症状の深刻さを周囲の人に理解してもらえないことに悩む方も少なくありません。

アトピー性皮膚炎の急性期（初発時または急な症状の増悪時）には、点状に生じる紅斑（赤い斑点）が多数現れます。紅斑の表面には、徐々に丘疹と呼ばれる小さなブツブツや水ぶくれなどの皮疹が増えてきます。皮疹が潰れると、体液が滲み出てジュクジュクとした状態になります。湿疹が乾いてくると、かさぶたや鱗屑（角質が剥がれて粉を吹いているような状態）が付着します。
掻きむしって病変が慢性化すると、湿った皮疹や鱗屑が日常的に持続します。

アトピー性皮膚炎の慢性化が進むと、皮膚に厚みが出てゴワゴワとしてきます。これは苔癬化（たいせんか）と呼ばれる状態であり、皮膚表面のしわや溝がくっきりとしてきます。
重症例では象の皮膚のような厚ぼったい肌になることもあります。同じ場所をずっと掻いていると、強いかゆみを伴う痒疹（ようしん）と呼ばれる硬いしこりもできます。

年齢によって発症部位や症状の程度が変わります。

2歳未満の乳児期は顔や頭、耳などにアトピー性皮膚炎の湿疹が出現します。症状は患部の乾燥から始まり、次に潮紅がみられます。症状が進行すると赤みが強くなり丘疹が現れます。患部をかくとかさぶたとなり、同時に湿疹の範囲が顔面全体に拡がります。やや遅れて四肢や胸腹部などにも紅斑や丘疹が出てきます。

2〜12歳の幼児や学童のアトピー性皮膚炎は体の1ヶ所または数ヶ所に強いかゆみと一緒に現れます。乳児期のアトピー性皮膚炎から顔面の皮疹が減って、ひざ・ひじの内側や首、お腹、背中などにみられるようになります。重症化すると顔面や四肢に症状が拡がり、掻くことでびらんやかさぶたを繰り返します。ひじやひざ、手足は皮膚が肥厚し、体幹、四肢には乾燥皮膚や鳥肌のような毛孔一致性丘疹が出現します。

13歳以上になると、アトピー性皮膚炎によるかゆみや湿疹が慢性化する傾向が強くなり、顔を含めた上半身に湿疹がよくみられるようになります。大人に成長するにしたがって治っていくことも多いアトピー性皮膚炎ですが、成人してから発症する人も少なくありません。実際にアトピー性皮膚炎全体の6割を占めているのは、20歳以上の患者であるとされています。

皮膚のバリア機能が低下して外からの刺激に弱くなります。

人間の皮膚は紫外線などの刺激や雑菌などが体内に入り込まないようにバリア機能を有しています。アトピー性皮膚炎ではバリア機能が低下して、通常よりアレルギー物質や雑菌などの侵入を許しやすくなってしまいます。すると、かゆみを起こすヒスタミンという物質が活性化したり、少しの刺激で過敏に反応して炎症反応を起こしやすくなったりします。

体質的な要因と環境的な要因がアトピー性皮膚炎の原因

• 体質的な要因（アレルギーになりやすい、皮膚のバリア機能が低いなど）
• 環境的な要因（食べ物、寝不足、過労、ストレスなど）

アトピー性皮膚炎の原因は、本人が持つ遺伝や皮膚の特徴が関与している体質的な要因と、生活習慣や食事などが関与している環境的な要因に分けられます。改善が難しい体質的な要因に対して、環境的な要因を特定できれば改善が可能です。症状を軽快するためにも、アトピー性皮膚炎の発症に関わる要因を把握することは大切です。

体質的な要因はアレルギー体質や皮膚のバリア機能の低下が考えられます。

アレルギーになりやすい体質の方は、アトピー性皮膚炎を起こしやすいと考えられています。自覚がなかった場合でも、実はその素因を隠し持っていることもあります。本人もしくはその家族に以下に該当する疾患の既往歴がある場合、アレルギーになりやすい体質である可能性があります。

• 気管支喘息
• 結膜炎
• アレルギー性鼻炎
• アトピー性皮膚炎

アレルギーになりやすい体質は遺伝することがあります。本人だけでなく家族の病歴も確認しましょう。
アレルギー検査を受けて「非特異的IgE」という項目の値が高かった場合、アレルギーになりやすい体質であると考えられます。

肌表面の角質層には、水分を蓄えて肌を乾燥や刺激から守るバリア機能があります。角質層は、アミノ酸などの保湿成分や水分の蒸散を防ぐ皮脂などの働きによって潤いが保たれています。角質層にあるこれらの成分が体質的に少ない方では、アレルギー物質の侵入に対するバリア機能が脆弱になりますので、アトピー性皮膚炎を起こしやすくなります。

環境的な要因は食べ物や花粉などのアレルゲンが考えられます。

環境的な要因の大部分を占めるのは、アレルギーの原因物質であるアレルゲンです。
個人によって異なりますが、食べ物や花粉、ダニ、カビ、ほこり、動物の毛などさまざまなアレルゲンがあります。寝不足や疲労など非アレルギー性の原因によってアトピー性皮膚炎を発症することもあります。

抗ヒスタミン薬とステロイド外用薬でアトピー性皮膚炎を治療



アトピー性皮膚炎の治療に有効な成分

フェキソフェナジン
アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎などの治療に用いる抗ヒスタミン薬です。花粉症の発症予防に適しており、眠気などの副作用が少ないことも特徴です。

フェキソフェナジンが配合されている商品

アレグラ
フェキソフェナジンを主成分とした抗ヒスタミン薬の一種で、眠くなりにくいという特徴があります。花粉症が酷くなる前に服用して、鼻炎を予防する用途に適しています。

最も優先されている治療法

治療法の内容	抗炎症外用薬と抗ヒスタミン薬の併用
診察が行える診療科	皮膚科
施術に使用する薬	抗炎症外用薬（塗り薬） 抗ヒスタミン薬（飲み薬）

アトピー性皮膚炎の治療は、かゆみや湿疹といった症状を抑えて日常生活に支障が起きない状態を維持することを目的としています。基本的にはステロイド外用薬などの抗炎症作用がある薬を塗布して改善を試みます。アトピー性皮膚炎に特有の強いかゆみを和らげるためには抗ヒスタミン薬の服用が効果的です。

抗ヒスタミン薬でかゆみを抑えて患部の悪化・拡大を防ぎます。

抗ヒスタミン薬は、アトピー性皮膚炎や花粉症などのアレルギー性鼻炎に有効です。抗ヒスタミン薬はアレルギー反応を引き起こすヒスタミンの働きを抑制することで症状を緩和します。
アトピー性皮膚炎の治療では、患部のかゆみを抑えて、引っ掻いてしまうことによる症状の悪化・拡大を予防します。アレグラなどが一般的に知られている抗ヒスタミン薬です。

抗ヒスタミン薬には、鎮静作用による眠気などの副作用がある「第一世代抗ヒスタミン薬」と鎮静作用のない「第二世代抗ヒスタミン薬」があります。改善効果には差が無いとされており、アトピー性皮膚炎にはアレグラのような第二世代抗ヒスタミン薬によって改善させることが推奨されています。

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ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏によって炎症を改善させます。

アトピー性皮膚炎による炎症は確実かつ速やかに鎮静化することが求められます。
抗炎症薬であるステロイド外用薬やタクロリムス軟膏は有効性と安全性が十分に検討されているため、アトピー性皮膚炎の基本的な治療薬として利用されています。ステロイド外用薬は皮疹に対する改善効果が5段階に分類されています。アトピー性皮膚炎の重症度に応じて第一選択するステロイド外用薬を決定します。

タクロリムス軟膏の効き目は、中程度のステロイド外用薬と同等の強さと考えられています。作用機序が異なりますので、体質的にステロイド外用薬が合わない方でも使用できます。長期間の使用にも適しているため、慢性化したアトピー性皮膚炎の治療に有用です。

アトピー性皮膚炎の予防はスキンケア

アトピー性皮膚炎の再発予防および悪化防止には、スキンケアによる肌の保湿と清潔を保つことが大切です。
アトピー性皮膚炎は皮膚のバリア機能と保湿因子が低下し、かゆみや炎症を起こしやすくなります。
保湿外用剤は角質層の水分保持を助け、皮膚バリア機能を回復・維持することで皮膚炎の再発予防やかゆみの抑制に効果を発揮します。
ヘパリン類似物質含有製剤や尿素製剤が保湿外用剤として効果的です。

皮脂汚れや汗などが定着したままの状態が続くとアトピー性皮膚炎が悪化する原因となります。毎日の入浴やシャワーで皮膚の汚れを洗い流して清潔にすることで、アトピー性皮膚炎の悪化や再発を抑制できます。お湯の温度は、42℃以上だとかゆみが生じたり、皮脂を落としすぎて乾燥肌の原因になることがありますので、38〜40℃が適温と考えられています。

アレルゲンなどのアトピー性皮膚炎の悪化因子が分かっている場合は、なるべくアレルゲンを除去するよう努めましょう。濡れた柔らかいガーゼなどで汗をふき取る、髪の毛が接触しないように短く切る・束ねる、ごわごわした生地の衣服は避ける、部屋の掃除と換気をこまめに行うなどが悪化因子の対策として効果的です。