心当たりがないクラミジアの感染経路は?原因や行為

クラミジアが感染する原因と感染に気づかない無症候性感染
クラミジアは、保菌者の感染部位と非感染者の粘膜部分(性器、肛門、喉など)の接触が原因となって感染します。温泉やプールに入って感染することはありません。
主な感染経路となるのは、以下のあらゆる性行為です。
- セックス
- オーラルセックス(フェラチオなど)
- アナルセックス
- ディープキス
クラミジア感染の原因は性器同士の接触だけではありません。性器から喉、喉から性器、喉から喉など複数の経路が考えられます。仮に女性のフェラチオが原因であれば「男性の性器から女性の喉」「女性の喉から男性の性器」という2通りの感染経路のパターンが存在します。
あらゆる性行為において、男性から女性、女性から男性、どちらに原因がある場合でも感染のリスクがあるということです。

心当たりがない?意外と気づかない感染経路とその特定を困難にしている無症候性感染。
クラミジアの感染が拡がってしまう原因は「無症候性感染」にあると考えられています。
無症候性感染とは、原因菌となる細菌やウイルスに感染したにも関わらず、何の臨床症状も発症していない状態(無症候)のことです。無症候性感染により、クラミジアに感染してしまっているのに本人が気づかないケースが多くあると考えられます。
クラミジアの症状は1~3週間ほどの潜伏期間の後に現れますが、感染したら必ず症状がでるわけではありません。感染時の菌の数が多い場合には潜伏期間を経て発症しますが、症状がない状態では感染に気づかないため、ほとんどの場合が無症候性感染であるといわれています。
厄介なのは「症状はなくても感染力は有している」という点と「無自覚のまま何年も菌を保持し続けるケースもある」という点です。クラミジアの感染経路に心当たりがない場合、過去に性交をした相手が無症候性感染をしていたことが原因として疑われます。
男女ともに数週間以内に性的な関係を持った相手が複数人存在する場合には、感染経路や時期の特定は困難です。無症候性感染では、可能性として何年も前に感染していたということも十分に考えられます。
性行為以外の感染経路。
クラミジアの感染に心当たりがない場合、次のような性行為以外の感染経路が原因として考えられることもあります。
- 公衆トイレの便座
- クラミジア感染者が使った直後のタオル
- クラミジア感染者の咳による唾液の飛沫
クラミジアは性感染症として知られていますが、上記のように性行為以外の経路を介して感染者の体液に間接的にでも触れる機会があれば、感染の原因となります。とはいえ、性行為以外で菌をもらってしまう可能性は極めて低いと言えます。
クラミジア・トラコマチスは宿主の細胞内でしか増殖の行えない細菌です。
空気中や水中ではすぐに死滅してしまいます。空気感染はもちろんのこと、感染者と同じプールや温泉に入ったことが原因でうつることはありません。
クラミジアの原因菌はクラミジア・トラコマチス
クラミジア感染症を引き起こす原因菌となるのがクラミジア・トラコマチスと呼ばれる細菌の仲間です。
クラミジア・トラコマチスは、別の生物の細胞内でしか増殖ができない偏性細胞内寄生体と呼ばれるグループに属しています。自らエネルギー代謝を行えないことから、自身だけでは増殖が行えません。宿主となる生物の細胞からのエネルギーの供給を受けて、生命を維持します。
クラミジア・トラコマチスは、角質の存在しない粘膜から侵入して、ヒトの尿道や子宮頸管、咽頭、直腸、結膜などにある円柱上皮細胞と呼ばれる部位に伝染します。円柱上皮細胞に接触したクラミジア・トラコマチスは、宿主の細胞が持つ食作用や飲作用(細胞が細胞外の物質を取り込む働き)によって、宿主細胞内に取り込まれます。
感染した細菌は形態の変化をしながら増殖を繰り返します。
クラミジア・トラコマチスには、形態の変化を繰り返しながら伝染・増殖を行うという特徴があります。まだ細菌の数が少なくクラミジアの症状がない期間が潜伏期間にあたります。潜伏期間中に増殖と伝染を繰り返して菌の数が増えると自覚症状が現れます。
宿主細胞内に侵入した直後のクラミジアは、基本小体(EB)という形態です。基本小体には細胞に伝染する能力を持っていますが、増殖する能力はありません。基本小体で伝染したクラミジアは、その後、網様体(RB)へと変化します。
網様体には伝染能力はありませんが、細胞分裂を行って増殖する能力があります。網様体に姿を変えたクラミジアは、細胞の中の封入体と呼ばれるタンパク質の膜の中で増殖していきます。
クラミジアは二分裂増殖によって、2つが4つ、4つが8つ…と菌体数をどんどん増やしていき、最終的には1,000体くらいにまで増殖したのち、再び基本小体に戻ります。
増殖したクラミジアによって封入体は拡張されて、ついには細胞膜が破壊されます。細胞膜の崩壊に伴い細胞外へと放出された菌は、新しい細胞へと伝染します。
クラミジアは新しい細胞内で再び網様体へと変化して、増殖 → 伝染のサイクルを繰り返します。このような形態の変化を繰り返す増殖様式は「二相性の増殖環」と呼ばれており、他の細菌には見られないクラミジア科の細菌独特のものです。増殖環には1サイクルに48時間ほどかかるため、病原性を発揮する個体数に増殖するまでには時間がかかります。
以上のことから、クラミジア・トラコマチスが体内に侵入してから発病までに最低でも1~3週間ほどの潜伏期間を要します。
細菌が感染部に炎症を起こすことで異常な症状が現れます。
原因菌であるクラミジア・トリコモナスに感染することで、菌から放出されるLPSという毒素に反応してサイトカインが放出されます。サイトカインは、身体を守るために免疫システムの細胞から分泌されるタンパク質です。毛細血管の拡張や血管の透過性の亢進を行う作用を持っています。
クラミジアの感染によって患部におきる炎症は、菌の侵入を受けて分泌されたサイトカインの作用によって、患部の充血や滲出がおきた結果によるものです。感染組織に炎症がおきると、かゆみや痛みなどの自覚症状となって現れます。また、サイトカインには、好中球(白血球の一種)の遊走を促す働きもあります。
菌と戦って役目を終えた好中球の死骸は、男性では膿、女性ではおりものとなって体外へ排泄されます。
