プレマリンの副作用「不正出血、吐き気、血栓症」について
プレマリンの主な副作用
プレマリンの主な副作用として下記の症状が報告されています。いずれの症状も発現頻度は極めて少なく、頻度は不明です。
- <主な副作用>
- 乳房の張り、性器出血、頭痛、悪心、体重増加など。
不正出血や胸の張りなどのマイナートラブルが多い
プレマリンの副作用として報告されている症状の多くは、不正出血や帯下(おりもの)の増加など、生理前によくみられるマイナートラブルです。性器の症状以外にも、むくみや胸の張り・痛み、吐き気、悪心、頭痛、めまいなども副作用として報告されています。
器官 | 症状 |
---|---|
生殖器 | 帯下増加、不正出血、経血量の変化 |
電解質代謝 | ナトリウムや体液の貯留(浮腫、体重増加等) |
乳房 | 乳房痛、乳房緊満感 |
過敏症 | 発疹、蕁麻疹、血管浮腫 |
消化器 | 腹痛、悪心・嘔吐、食欲不振、膵炎 |
皮膚 | 色素沈着、脱毛 |
精神神経系 | 頭痛、めまい |
肝臓 | 肝機能障害(AST、ALT、Al-P上昇等) |
呼吸器 | 呼吸困難 |
循環器 | 血圧低下 |
上記の副作用は、大半がホルモンバランスの変化によって発症します。プレマリンは、不足した卵胞ホルモンの働きを補充するために開発されたエストロゲン製剤です。プレマリンを服用すると、人為的にホルモンバランスの変化が起こります。
主な副作用は服用当初のみに発症する一時的な症状
プレマリンの副作用は、ほとんどが服用当初における一時的なホルモンバランスの乱れによる症状です。副作用が発症した場合でも、服用を続けていくうちに体内のホルモンバランスが安定します。そして数日間で症状が軽快するケースが大半です。副作用が軽度であるうちは、焦らず様子をみましょう。
不正出血が止まらないなど飲み続けても症状が軽くならない場合は、医師に相談のうえプレマリンを服用する時間帯の変更を検討しましょう。就寝前や昼食後に服用すると、症状が発現しづらくなるとされています。
プロゲステロン製剤の併用時に起きやすい副作用
プレマリンを使った治療は、プロゲストンやプロベラなどのプロゲステロン製剤(黄体ホルモン剤)を併用しながら行われるケースが一般的です。プレマリンの副作用として生理前によくみられるマイナートラブルが報告されていますが、実際のところはプロゲステロン製剤の影響によるところが大きいと考えられています。
プロゲステロン増加に伴う副作用と発症の仕組み
プレマリンの副作用として、吐き気や腹痛、体重増加、眠気、だるさなどが挙げられます。しかし、これらの症状はプレマリンの成分であるエストロゲンが原因ではなく、プロゲステロンが体に与える影響によるものです。エストロゲンとプロゲステロンの混合剤である低用量ピルの使用期間においても、プレマリンとプロゲステロン製剤の併用時と似たような症状が報告されています。
プレマリンとプロゲステロン製剤の併用によって副作用が起きる仕組みは、生理前にマイナートラブルが起きる原理に似ています。女性の体の構造上、生理前になるとプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌量が急激に増えます。このため、副作用と同様の症状がみられます。
吐き気や腹痛の仕組み
プロゲステロンは、腸の運動を鈍くする作用があります。腸の運動が低下すると便秘が起こりやすくなります。これに伴って吐き気や悪心、腹痛や腹部膨張感といった消化器系の副作用が引き起こされます。服用を続けていくうちに体内のホルモンバランスが安定してきますので、消化器系の症状が発現したとしても、徐々に治まります。
眠気やだるさの仕組み
プロゲステロンを摂取すると基礎体温が上がります。基礎体温が上がると、「妊娠した可能性があるので体を休ませるように」と脳から指令が出される仕組みになっているのです。これが原因となり、眠気やだるさといった副作用が出ます。
むくみや太る仕組み
むくみや体重増加の副作用が起きる原因も、眠気やだるさと同様、基礎体温上昇に伴う脳の錯覚です。脳が「妊娠した」という錯覚を起こすと、その状態を安定させるため、栄養や水分などを体に蓄えようとします。その結果、食事や水分の摂取量が普段と変わらなくとも体がむくんでしまい、太ることがあります。
プレマリンが単剤で使用されない理由
プレマリン単剤の使用は、子宮体がんのリスクを2.3倍に増やすと考えられています。また、子宮内膜の大病を引き起こす可能性も高めます。
更年期障害などの治療でプレマリン錠が処方される際には、プロゲステロン製剤も一緒に処方されます。これは、プロゲストンやプロベラなどのプロゲステロン製剤が、子宮体がんなどを予防する役割があるためです。
プレマリンを単剤で服用する場合は、吐き気やだるさ、体重増加などの副作用が生じるケースは極めて少ないと考えられます。しかし、子宮がんのリスクがあるので、自己判断で単剤使用するのはやめましょう。
注意すべき副作用は血栓症
プレマリンの副作用で、最も気を付けなければいけないのが血栓症です。
血栓症とは、血管内に血の塊ができて詰まってしまう症状のことを言います。詰まった欠陥の箇所が頭なら脳溢血、心臓なら心臓疾患になります。最悪、命に関わることも多く、極めて危険です。
血栓症が発症すると、後遺症や命を落とす可能性があります。このため血栓症は早期の発見が極めて重要です。プレマリン服用中に以下の症状が起きた時は注意が必要です。
- ふくらはぎの痛み
- 突然の息切れ
- 激しい頭痛
- 脱力、痺れ
- ろれつが回らない
- 急に視界が悪くなる
膝下が膨れ上がったり、手足のしびれが数分起きたりするのが前兆です。長時間飛行機に乗って起きるエコノミー症候群と同じ状態と考えて問題ありません。
プレマリンの使用によって上記の症状が出たら、早急に病院を受診しましょう。
プレマリンの臨床研究で男性に起きた変化
プレマリンは女性が服用するために開発された医薬品です。ただし、例外的に男性が服用することもあります。
適応外ではありますが、性同一性障害の治療をする場合、ホルモン療法として男性にプレマリンが用いられるケースがあるのです。
プレマリンの臨床研究結果として、男性が使用した場合の副作用も報告されています。男性に認められたプレマリンの副作用は、乳房と性欲に関するものです。
副作用の症状 | 国内 (総症例数53人) |
海外 (総症例数555人) |
---|---|---|
副作用全体 | 10 | 365 |
乳房疼痛・緊張 | 1 | 9 |
乳房肥大 | 1 | 6 |
乳房過敏 | 5 | 6 |
女性化乳房 | 4 | 179 |
性欲減退 | 0 | 162 |
このように、プレマリンを男性が服用すると、乳房に変化が生じる副作用が出ることがわかっています。他にも国内では報告されていませんが、海外ではおよそ30%(162人/555人)の男性がプレマリンによって性欲減退となりました。。
ホルモン療法として男性がプレマリンを服用する場合は、女性が服用する量の3倍もの分量を服用します。これらの臨床試験は、あくまでも女性と同じ分量を飲んだ場合の副作用発現率です。実際はこれよりも高くなると考えられます。
これらから見て取れるように、男性が女性ホルモン剤を服用すると、体内のホルモンバランスが大きく変化します。体のラインや性機能にも、大きな影響を与える可能性があります。男性の方がプレマリンを使用する場合は、医師の指示に従いましょう。